また今度
荷物を取ってくるからとラウダがテントを離れてすぐ、ぱたぱたと小刻みに聞こえていた音はあっという間に絶え間なく降り始めた。そう言えば今月は夕立が天候プログラムに入っていると思い出したものの時既に遅し。テントを張った場所までは屋根などない。しま…
小説 水星
今じゃない
両脚を開いてラウダを受け入れる。普段使わない筋肉の僅かな痛みと共に受け止めた弟の体重。その心地よさにグエルはふっと笑みを洩らした。その拍子に裡が収縮したのか、締め付けにラウダが眉根を寄せる。限界へと駆け昇るように腰を打ち付けながら、ラウダは…
小説 水星
眠りの淵
※フロント内の空調が地球の気候を模した設定(極端にはならないよう調整された上で)にされている、という捏造。 するりと足元から入り込む冷気にラウダは身を震わせた。手を滑らせれば冷たいシーツの感触。そういえば気候設定が切り替わる時期だ…
小説 水星
おかしくなりたい
唐突に寄せられた顔。向かう場所を理解した途端グエルの手が動いていた。互いの口の間に差し込む。ふに、と触れる筈だった唇が掌に口付けた。弟は、今、キスしようとしたのか。兄である俺に。異母とはいえ血の繋がった兄弟であることは間違えようもない。犯し…
小説 水星
SS集21~25
弟が俺のグッズを作るという。グッズ。俺の。イメージグッズ。弟が、兄の。……思わず頭を抱えそうになる。社のイメージグッズならまだしも、個人のグッズを誰が使うと言うのか。けれどあまりにも弟が楽しそうに話すものだからストップをかけるわけにもいかず…
小説 水星
僕の好きなこと
熱いのに乾いた手のひらが肌に触れる。肩を、腕を、胸を、腰を、まるで輪郭を確かめるように。内に秘めた熱が確かにあるのに、それを見せてはくれなかった。まるで壊れ物のように扱われて、グエルは思わず弟の名を呼ぶ。「お前の好きなようにしていいんだぞ」…
小説 水星
SS集16~20
「ラウダ!」兄の声が聞こえた。まだ幼い頃の声が。差し出されたのは小さな手。弟へ、めいっぱい広げて。「兄さん、まって…!」おずおずと伸ばした手が掴む前に兄は走り出す。いつだってラウダが見つめるのは兄の背中ばかり。記憶に鮮やかなあの日も、そして…
小説 水星
SS集11~15
弟の小さなわがままを聞くのが楽しくて、最近のグエルは弟以上にラウダのことをよく見ていた。実は好き嫌いが結構はっきりしてそうなとこ。苦手な人や食べ物があると長めの前髪をくんっと引っ張ること。それから――寝る時たまにうなされていること。弟の好き…
小説 水星
SS集6~10
スレッタとの結婚式を前に写真のデータを見返していたミオリネは、ふと手を止めた。そこに写っているのは幼い頃のジェターク兄弟。父親に連れられ顔合わせをしたときのものだ。写真の中ではグエルの一歩後ろに控えているラウダだが、ミオリネたちが喧々囂々や…
小説 水星
SS集1~5
兄は極稀に弟を全力で甘やかしたくなる周期があるらしい。うっかりそのタイミングで私室を訪れたが為に、ラウダはグエルの腕に抱きしめられていた。柔肌と体温とが頬に当たる。喜びと照れくささの狭間で表情に悩んでいると、大きな掌が頭を撫でた。細くて柔ら…
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約束
約束通り早めに帰宅し、キーや荷物を定位置に置く。室内は明るいものの兄の姿はない。ラウダは無意識のうちに左の薬指を撫でていた。つるりと滑らかなリングが、そこは自分の居場所だというように静かに収まっている。そのままリビングの壁際に備え付けられた…
小説 水星
刻印
真上から押し潰すようにラウダは自重をかけた。完全に拓ききったナカがすべてを受け入れようと蠢く。ラウダの形を憶えてしまった内壁はいとも簡単に快感を拾う。ぴたりとくっついているだけでも充分すぎるほど気持ちいいのに、シーツをきつく握る手から何度も…
小説 水星