水星

君を推したいだけなのに

※ラグアイドルパロ本※※モブの一人称過多※※それでもいい人向け※   ***ね、アイドルのライブって興味ない?ランチの席で同僚が突然そう言った。アイドル、アイドルねえ。「あんまり興味は無いかなあ」「そこをなんと…

おそろい

地球土産だと父から手渡された紙袋をグエルは両手で受け取る。軽くも重くもない袋はどこか柔らかく、礼を言ってグエルはソファに座った。隣へ当たり前のようにラウダが腰掛ける。ヴィムに開けるよう促されガサガサと音を立てて二対の目が覗き込む。と、藍色の…

負けず嫌い

ちらりと隙間から覗いた粘膜は熟れた果実のようだった。触れれば溶けて崩れそうなそれは、しかし想像以上の弾力でラウダの舌を押し返した。負けじと絡めれば僅かな痛みが舌先に走る。甘噛みした箇所を慰めるようになぞられて知らず肩が震えたのを、兄は見逃さ…

仕返し

降下した地球は茹だるような暑さだった。歩くどころか立ちすくむだけで汗が噴き出し肌を伝う。兄の首筋を伝う雫にラウダは人知れず唾を呑んだ。ひとまず座ったところへガイドが「良ければこれを」と持ってきたのは透明なグラスに入った何かだった。受け取った…

弾けたそれは、きっと

珍しく予定通りに帰宅したヴィムは上機嫌そうに小瓶を差し出した。グエルの両手に丁度収まる程の大きさをした瓶には、色鮮やかな欠片が詰まっている。薄く霞がかった欠片は鉱石のように様々な形をしていた。指先でつまみながら一つずつ取り出す。グエルは飴色…

いつもと同じラウダ先輩

動物に喩えるなら、と言い出したのはフェルシーだったろうか。迷わず獅子を選ぶ兄に倣おうとも思ったが、後輩たちはこぞって猫を挙げた。「毛並みの良い黒猫!って感じっス!」わかる、とペトラ。グエル以外が撫でたら爪を立てそうだなとカミル。グエルは想像…

願い事ひとつ

もしも一つだけ願いが叶うなら、何を願う?突然の問いかけにラウダは琥珀色の瞳を揺らした。「一つだけ……?」「そう、一つだけ。あっ、何でも叶えてほしい! ってのはナシ」両手で大きくバツをつくる兄に弟はくすくすと笑う。休憩時間に入る前、家庭教師が…

生贄

とうさん。幼さの残る話し方とは裏腹に、聞こえる声は明らかに成人した男性のものだ。ラウダはその違和感を気にも留めず、ただ「グエル」と名を呼んだ。彼が大切にしてきた呼び名が今この時、使われることはない。ベッドサイドに座ったまま足を揺らす兄の隣へ…

出ない本の冒頭

※全部出ません※(多分)この世界には第二の性が存在する。義務教育を終える頃に発現されるというα、β、Ω。中学の卒業を間近に控えたジェタークの子供たちも例外はなく、第二性の検査結果を受け取った。自らがα性であることを一瞥すると、ラウダは隣に立…

性癖パネルトラップ

①全集時空✕受けの嫉妬ラウダ、と名を呼ぶ前に弟はくるりと振り向いた。「どうしたの、兄さん」「いや、あー、なんだ、その、さっきお前のこと呼んでる奴がいたぞ」「誰、兄さんに伝言させるなんて不届きな輩は」「輩って………お前なあ。二年の女生徒だよ、…

それらすべて愛しき日々

Conversation大破したディランザからフェルシーの機体へ移り込む。涙目で「バカなんスかぁ」と睨む後輩にどんな顔をしたらよいか分からず戸惑っていると「間に合って良かったっスけどぉ」と更に泣かれてしまった。子犬のように後ろをついて回って…

Gratefulday2024

グエル先輩に感謝を伝えるには多くの障壁が存在する。まず、グエル先輩にふさわしい贈り物を探すこと。次に、グエル先輩のロッカー周辺に人がいない時間を見つけること。それから、グエル先輩に私なんかが贈り物をしてもいいのかと葛藤する己との戦い。でも、…