地球土産だと父から手渡された紙袋をグエルは両手で受け取る。軽くも重くもない袋はどこか柔らかく、礼を言ってグエルはソファに座った。隣へ当たり前のようにラウダが腰掛ける。ヴィムに開けるよう促されガサガサと音を立てて二対の目が覗き込む。と、藍色の何かが見えた。
「父さん、これ何? 服?」
取り出して広げると、テーブルには同じ色、同じ形の物が二枚並んだ。手触りはさらさらとして、表面に少し凹凸がある。上下に分かれたそれはパジャマにも見えたが、上衣が斜めに裁断され左右に開く形は二人が見たことのないものだった。下衣はひざ小僧が見えるくらいの長さだろうか。両肩のあたりを摘んで持ち上げ眺める息子たちにヴィムが向ける視線は優しい。
「甚兵衛といって、日本の伝統的な和装の一つらしい。着やすく動きやすいから寝間着にどうかと思ってな。気に入ったか?」
「うん!」
「……はい」
父からの贈り物であれば何でも瞳を輝かせるグエルはともかく、ラウダまで嬉しそうに目を細めている。珍しい、と思うだけでなく口に出ていたらしい。息子たちが揃ってきょとんとしている。
「ああいや、せっかくなら違う柄のものをと思ったんだが探す時間もなくてな」
ヴィムが言うやいなや、ラウダは慌てたように甚兵衛をぎゅっと抱き締めた。譲らないとでもいうように。
「これがいい!…………です」
父に意見するなど、これまでしたことのない己の行動にじわじわとラウダの顔が赤く染まっていく。すると隣で聞いていたグエルも自分の甚兵衛を胸元に宛ててヴィムを見上げた。
「おれも! ラウダとおそろいで嬉しいよ、父さん。それにこのジンベエ、ラウダの髪の色にそっくりだし」
な、と兄に微笑まれラウダの心臓が跳ねる。こくりと小さく頷いて、ラウダはもう一度手の中のものをきゅっと抱き締めた。
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