性癖パネルトラップ

①全集時空✕受けの嫉妬

ラウダ、と名を呼ぶ前に弟はくるりと振り向いた。「どうしたの、兄さん」「いや、あー、なんだ、その、さっきお前のこと呼んでる奴がいたぞ」「誰、兄さんに伝言させるなんて不届きな輩は」「輩って………お前なあ。二年の女生徒だよ、ほらあっちで様子窺ってる」グエルが示した方向には、確かに三人組の生徒が固まっている。何事か話しているようだが小さい声はここまで届かない。兄との時間を邪魔されたことに苛立ちを隠さず息を吐いたラウダは、けれど無視することもできず抱えていた資材をベンチの上へ置いた。「ちょっと行ってくるよ。待たせてごめんね、兄さん」「俺は構わんが……」「兄さん?」珍しく歯切れの悪い兄にラウダの歩は止まる。「……その、よくあるのか?」「えっ」「こういう……呼び出しみたいな」よく見れば兄の視線はうろうろと彷徨っている。それが羨望やら僻みやらではないことは誰よりもラウダが理解していた。なぜなら二人は恋人同士なので。「誰に告白されたとしても、僕には兄さんしかいないよ」「だっ! そっ! なっ……!」だれが、そんなこと、なんで、だろうか。目元に朱を昇らせた兄へ思わず口付けたくなる衝動を抑えてラウダはするりと手を伸ばした。愛撫するように己よりがしりとした指の間をなでる。「すぐ断ってくるから待ってて」「っだから、そういうんじゃ」言い終える前に指が離れていく。心なしか軽い足取りの後ろ姿を見送りながら、グエルは大きな溜め息を吐いた。

 

②居ぷろ時空✕射精管理

しゃせいかんり、と聞いたまま口にして、意味を理解するや否やぎしりと固まった。耳まで真っ赤にしたラウダがじっとりと熱を孕んだ瞳で見つめてくるが、それにしたって。冗談半分で「お前のやりたいこと何でも聞いてやるぞ」等と言うべきではなかった。あまりにも変化球すぎやしないか。「……男に二言は無いよね」追い打ちをかけるな追い打ちを!「冗談じゃ……」「冗談でこんなこと言えるわけないでしょ」それはそうだ。だがそれにしたって、フェラとか騎乗位とかそんなもんだと思うだろ!?健全な男子高校生なら!「ちなみに管理されるのは」「兄さん」だよなあ。してほしいわけじゃないよなあ。……ところで。「苦しいのか……?」「最初は苦しいけど、凄まじく気持ちいいらしい」「……凄まじく」「うん。ちゃんと勉強したよ」勉強しちゃったのかあ。テスト近いのに何してんだ。「あと色々出ても大丈夫なようにバスタオルとかも準備できてる」「……用意がいいなあ」「うん……」そこで照れるのか? でも俺の弟、可愛いな。なんかローションガーゼとか言ってるけど。絶対無理強いしてこないのが分かってるから、あとは俺が頷くどうか。拒否すれば何だかんだ弟は諦めるだろう。だが、「……凄まじい……」「絶対に気持ちよくするよ、兄さん!」首を縦に振るまで、そう遠くはない気がする。

 

③テントグエル✕受の取り合い

「兄さんの隣に立つのは僕だよ」と、臙脂のスーツを着た男が。
「にいさんは……兄さんは僕の兄さんです」と、少年が。
「何をふざけたことを。そもそもお前たちは誰だ。僕の兄さんに近付くな」
アスティカシアの制服を着た青年が言うや否や、他の二人がきつい視線を向ける。
困惑したグエルが幼い頃の弟を安心させるようにそっと手を包むと、制服姿の弟が苛立たしげに自分の前髪を掴んだ。
テントから出た途端三人の弟に囲まれて「兄さん」と詰められたのだ。置いてきたはずの弟(たち)に。さてどうしたものかとしゃがみ込む。懐かしいフォルムの頭を優しく撫でれば少年の顔が真っ赤に染まる。
「兄さん!」
解決の糸口も見えないまま、グエルは困ったなあと呟いた。

(以下、没ったけど供養)

「兄さんが二人いたとして」
「俺が二人いたとして?」
突拍子もない弟の言葉。グエルは珈琲片手に首を傾げる。
「僕は兄さんたちを独り占めすると思うんだ」
「……? おう」
「でも僕が二人となると」
「ラウダが二人? なんか楽しそうだな」
「困るんだよ」
「困るのか?」
この世の終わりと言わんばかりの顔をして言うので、思わずグエルは珈琲を置いた。身を乗り出すとキャンプチェアが軋む。
「もし僕が二人いたら、まず兄さんの弟がどちらか喧嘩になるだろ」
「? おう」
グエルはよく分からないまま頷く。弟があまりにも真剣な目をしているので。
「きっと兄さんの弟の座をかけて決闘になる。でも兄さんはそれを望まない」
「二人とも俺の弟じゃダメなのか?」
「ダメ!! 兄さんは僕の兄さんでしょ」
「お、おう」
あまりの勢いに乗りだした身を引っ込める。
「そうはいっても、僕らのことだから絶対に引かないだろうし……そうなると兄さんが二人分相手をすることになる。そうしたら大変なのは兄さんの方だよ」
「うん?」
「僕らが一回で満足するとも思えないし」
「うん……?」
「兄さんの体力面は心配してないけど、でも毎日二人の相手をしたらさすがに疲れるだろうし」
「ら、らうだ?」
「かといって順番にっていうのも僕らは納得しないだろうから、兄さんのことが心配なんだ」
「……仮定の話だよな?」
真面目な顔をして滅茶苦茶なことを言っている自覚はあるのだろうか。グエルは先程珈琲を置いた自分を褒めたくなった。あのまま飲んでいたらきっと遠からず吹き出していただろう。まだ止まる様子のない弟を眺めながら、グエルは冷めた珈琲を温めるべく手を動かし始めた。

 

④幼少期×3P

「あなたはぼくと兄さん、どちらが好きなの?」
先月のパーティで兄に告白したという少女が、今夜はラウダに言い寄ってきた。幼くとも両親から仲良くするよう厳命されているのだろう。少女の目にラウダの知る焦がれる色は見えない。
「ッ、私は二人に憧れてて……っ!」
「そう。ぼくも兄さんも三人でする趣味はないから他を当たって」
すげなく返せば頬に朱が昇った。ぱしん、と乾いた音。
「……暴力的な人間も兄さんの趣味じゃないよ」
「最低……っ!」
「それならぼくたちに近付かないで」
ラウダの世界に兄以外は不要なのだから。

 

⑤CEO代理×ボブ ×ファーストキス

「おうボブ、例の坊ちゃんまた来てるぞ」と声をかけられたグエルはくしゃりと表情を歪ませた。どこから情報が漏れたのか家出したグエルを探し出したラウダが足繁く通ってくるのだ。兄に似た別人だと嘘をつき通しているが、ラウダが微塵も信じていないのは感じていた。それでも無理矢理連れ帰ろうとしないところに弟の理性を感じてもいるのだが。周囲からは御曹司に一目惚れされたと思われているため、最近では皆がことの成り行きを面白がっているようでもあった。「なあボブ、応えてやったらどうだ? 玉の輿だろ」「顔も財力も良さそうじゃねえか」「でも気持ちが伴わなきゃなあ」「いっそキスの一つや二つしてみたらどうだ?」何を、と顔を赤くしたのは兄弟でするわけがないと思ったからだが、勘違いした周囲が「まさか」と目を円くする。「ボブ、お前……初めてなのか!?」「そんなのどうだっていいじゃないですか!」必死の否定は虚しく作業空間に吸い込まれていった。

 

⑥おとなとこども×指フェラ

ラウダが縮んだ。縮んだというか、子供になった。グエルと出会った頃か少し前ぐらいだろうか。明日には戻るらしい。なんだそれ。「……兄さん?」見上げる瞳が不安げに揺れる。グエルは腰を下ろすとくしゃりと慣れた手つきで頭を撫でた。安心させるように微笑む。「大丈夫だ。俺がついてるからな」そんな微笑ましい光景だった筈だ。それがなぜ、こんなことに。「兄さんの指、こんなに太くなるんだね……僕とそんなに背も変わらなかったのに」「ーーっラウダ、くち、離せ……っ」小さな口には収まりきらず、ラウダはちろりと舌先で擽るように兄の指を舐めた。記憶が退行していないことも既にグエルにはバレている。互いの躰を重ねた回数など数え切れないというのに、己の見た目が災いして今夜はしないと言う。ならばせめて口付けぐらいはと兄の手を取ったのが数分前。中指と薬指をまとめて咥内に含めばひくりと中で震えた。

 

⑦ホルグ✕スワッピング

「……おまえ、ラウダか?」
「その姿……兄さんなんだね」
寝て起きたら未来にいたなんて誰が信じるだろう。視線を彷徨わせるグエルの隣にラウダはゆっくりを腰を下ろした。艶やかな兄の鬣が懐かしい。記憶が確かなら、今頃学生の自分の元へ十年後の兄が訪れているはずだ。
それからどうやって未来に戻ったかも、今のラウダは知っている。
「兄さん、落ち着いて聞いてほしいんだけど」
「……随分と大人びたな、ラウダ」
「兄さんは思ったより落ち着いてるね。さすがは僕の兄さん」
ストレートな褒め言葉にグエルの表情が和らぐ。しかし続けられた言葉に、グエルの身体はぎしりと固まった。
「元の世界に戻るには、僕らがセックスする必要があるんだ」

 

⑧壮年✕モブ視点

CEOのお二人が引退されると聞いたのは退勤後の通知だった。思わず同僚に連絡する。知ってた?今知った。ショック。私も。早すぎない?なんで。会社を心配する気持ちは元より、社内で彼らを見かけるだけでも仕事の意欲が湧いていたのに。それに、無理なことは百も承知の上で私はラウダCEOに憧れていた。僅かな恋心も含んで。もう偶然すれ違うこともなくなるのだと、そう思ったら体が勝手に動いていた。翌朝。多くの社員たちに囲まれるお兄さんを少し離れたところから眺めるラウダCEOに声をかける。ジェタークで働けることへの感謝と、それから。年を重ねても変わらず涼やかな瞳で彼は私を見た。その表情は困っているというよりはなぜ自分なのかと疑問を浮かべているようで、泳いだ視線の先にはグエルCEOが皆に囲まれ笑っていた。唐突に気付いてしまう。彼の、ラウダさんの瞳に私がーーいや、彼以外の誰もが映る筈もないってことに。「急にすみませんでした。お元気で、どうかお幸せに」そう言って頭を下げる。謝辞を伝える穏やかな声が返ってきて、それだけで充分だった。

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