いつもクールで知的なラウダ先輩。私は入学式で見かけた時から彼に夢中だ。友達には「高望み」だとか「こっちなんて相手にしてくれないよ」とか言うけど、そうじゃない。別に私を見てほしいわけじゃない。物陰からこっそり応援?見つめて?いたいだけ。ストーカーではない。多分。
今日はパイロット科と別棟での講義だから一目見れたらラッキーなんて思ってたけど、曲がり角のところでラウダ先輩の声が聞こえた。これはチャンス!友達には先に行ってもらって少しだけ寄り道。静かに廊下の角から覗いてみれば、やっぱり先輩がそこにいた。端末を耳に当てて立っている。いつも一緒にいる先輩たちやフェルシーたちは見当たらない。
「……ああ、そっちは……うん、うん……」
普段と違って少し柔らかい声。通話の相手はきっとお兄さんだろう。もう少しだけ近くで見たくて顔を覗かせる。
うう、すらりと通った鼻筋に切れ長の瞳、本当にかっこいい。
「それじゃあ父さんによろしく。……うん、兄さんも気をつけて」
たっぷり数秒、画面を見つめてから長い指が端末をタップした。その後もなお先輩は画面を見ている。まるでそこにグエル先輩がいるみたいに。
見たことのない横顔。ラウダ先輩、あんな表情するんだ……大事なものを見つめるような、うっとりするような――うん? なんかそれって、私みたいな。
その時校舎に予鈴が響いた。まずい、遅れる。急いでその場を後にする。うう、なんでこんなにどきどきするんだろう。まるで見てはいけないものを見てしまったような気がして、私はぎゅっと心臓を押さえた。
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