小説

残暑見舞

地球に行くぞと父が言い出したのは何故だったのか、皆目見当がつかない。理由は分からないものの日頃会社のことばかりだった父が三人で出かけようと言ってくれたことが嬉しくて、その夜グエルはろくに眠れなかった。初めて降り立った地球はむっとした熱気を孕…

暑中見舞

溶けたアイスが手首を伝う。薄く色付いた液体は肘のあたりまですうっと流れていきぱたぱたと地面に落ちた。乾いた地面に数滴の円が描かれ、しばらくすると消えていく。「あ、おい。ラウダ、垂れてる」「……え?」兄の声にようやく意識を戻した少年は、はちり…

the night before

父さんに呼ばれることは滅多にない。父さんは仕事で忙しいから、おれたちのために一生懸命働いてくれているから、だから寂しいなんて思っちゃいけないし、そうあるように努力してきた。母さんが家を出てからは余計に忙しそうにしてて、おれはなんて声をかけた…

Home, sweet Home.

エラン・ケレスが持ちかけてきた業務提携の内容を確認していた、その時だった。端末が着信を告げる。画面に浮かぶのは漸く見慣れた名前。長らく別々の姓を名乗っていた異母弟とお揃いの姓を抱くようになってから、もう一年になる。着信を承諾する旨を告げて音…