「ラウダ」
兄の声に呼ばれるように、重い目蓋を上げた。薄ぼんやりとした天井は見知ったジェタークの屋敷のものだ。いつの間に戻ったのか。視線を左右にやるが兄の姿は見えない。ぼやけて見える景色はやはり自室のようで、なぜ兄がここに、という疑問も浮かんでくる。
だが、それよりも覚えた下半身の違和感。兄の声もそちらから聞こえてくることに嫌な予感が増す。
(まさか、いやそんなはずは、でも……)
「起きたか」
「ひっ! に、兄さん!?」
裏返った声が面白かったのか、グエルは目を丸くしたあと小さく笑った。しかしラウダにとっては笑い事じゃない。
「なっ、いっ、そ、は、離して……!」
なんで、いつからそこに、だろうか。言葉にならない悲鳴を上げて両手で隠そうとしたのは、グエルが口に含もうとしている己の性器だ。
「口でされるのは嫌だったか」
「そうじゃなくて! そうじゃないけど! 兄さんにそんなことさせられるわけないだろ!? ……ッ、兄さん!!」
つまらんとばかりに手で扱き始めたグエルに必死で抵抗する。ラウダも兄に倣ってそれなりのトレーニングを積んできているが、局部を握られた状態で敵うはずもなく「ひぃっ」と刺激に膝を擦り合わせるしかない。
「気持ちよくないわけじゃないんだろう?」
「そっ、ん……なの、兄さんだって、んっ、わかる、だろ……ッあ、ほん、とに、ダメだって……!」
先走りを筋に塗られ、指の輪が雁首をくすぐる。なぜこうも自分の弱点が知られているのか理解できないまま、ラウダは息を上げる。
「こんなに興奮してるのにか?」
いいこいいこをするように手のひらで先端をくるくる撫でられると、堪らずラウダは腰を突き上げた。赤く充血した屹立がグエルの頬をぐに、と突く。視界と感覚と両方の刺激に耐えられる筈もなく、ラウダは悲鳴を飲み込みながら足先を突っぱねた。うお、という色気も何もない声が聞こえた気がする。
(――気がする?)
目を開けた瞬間飛び込んできたのは見慣れた天井。聞こえるのは荒げた己の吐息のみ。勿論、そこに兄の姿はない。
「…………最悪だ」
濡れた感触だけでなく自分の思考にすら悪態を吐くと、ラウダはのろのろとベッドを降りた。
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