12/31 23:00

 ラウダの部屋の奥、サイドボードに置かれた時計が23を示すのをベッドに転がったまま眺める。

 年が明けるまであと1時間。クリスマスに少しだけ家に立ち寄った父はグループの懇親会やら何やらで今日もいない。いつも通り22時には身支度を済ませ、「おやすみ」と笑った兄はもう眠っただろうかと隣室に視線を向ける。

(……?)

 ふと、小さな物音が聞こえた。

 父の帰宅にしては随分と小さな物音だ。

(もしかして……)

 そっとベッドから抜け出す。スリッパに足を潜らせて、音を立てないように扉へと近付く。 期待しないように言い聞かせるのに、胸はどきどきと高鳴ってしまう。

「……ラウダ、起きてるか?」

 やっぱり、とラウダは手を握り込む。カチャリと音を立てて扉が開かれると、そこには両腕いっぱいの荷物を抱えたグエルがいた。ぱっと見ただけでもスナック菓子、チョコレート、ジュース、クリスマスは過ぎたというのにどこから集めてきたのか。

「兄さん!?」

 思わず上げかけた声をそっと潜めて室内へ誘う。いそいそとベッドへ向かったグエルは抱えていた荷物をぱっと放るが早いか、そのままベッドに飛び乗った。スプリングが幼い重みにきしりと鳴る。

「な、今日くらい悪いことしようぜ」

 ラウダ。

 グエルがそう言って笑うから、ラウダも胸がどきどきしてしまう。

 きっと0時になったらジャンプするのだろう。楽しいことはグエルに教えてもらった。クリスマス・イブにサンタを待ち伏せするのも、年越しの楽しみ方も。

「寝る前に歯磨きはしないとね」

「そこかぁ?」

 片眉を上げて反応したグエルは早速チップスの袋を破ろうとしている。今年は何時まで起きていられるかなと考えながら、ラウダもベッドの上へ乗り上げた。

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