朝起きたら体が縮んでいた。
――自分でも何を言っているかと思うが、事実目に見える腕も手も足も短く小さくなっている。手なんかぷにぷにだ。何故。服を着ていないのは昨夜、あー……とりあえず、だ。軽く頭を振ったり手を握ったりしてみる。気分が悪いわけでもないし、身体に痛みもない。あまりに突拍子もないことが起こると逆に冷静になるらしい、今知ったが。
「うう…ん……にぃさん……?」
懐かしい声がする。こんもりと山になったシーツの中から。――懐かしい声?
「ラウダっ!?」
「兄さん、声どうしたの? ……えっ!?」
もぞもぞと顔を覗かせた瞬間、ラウダの目が円くなった。そういえば可愛い顔してたんだよな、ラウダ。
「お前もか……」
「僕もって、えっ、……は? 何これ……兄さん可愛い……」
ぽやんとした顔で言っているが、今はそこじゃない。
「どうやら身体が縮んだらしい」
「そんなコミックみたいなこと」
「だが事実、俺もお前も幼くなっているだろう」
「……二人で同じ夢を見てる、とか」
珍しく弟が非現実的なことを言う。
「つねってみるか?」
「兄さんを? 嫌だよ」
「じゃあお互いに、自分の頬を」
「それなら……う、痛い」
「……夢じゃないな」
さてどうしたものかと座ったまま首を捻る。するとラウダがおかしな方向に視線をやっているのが見えた。
「ラウダ?」
「あの、兄さん……」
「どうした」
「とりあえず、その、下着をはいてほしいんだけど……」
目の毒。そう呟いて今度こそ視線をがっつりそらした。昨日も散々見ていたし、なんなら舐めていたのに?
「それはそれ、これはこれだから……!」
「まだ何も言ってないぞ」
「兄さんの考えそうなことくらい分かるよ」
うーん、困ったことになった。何故ならラウダには見せていないが、俺の手元には一枚のカードがあるからだ。中には「繋がれば戻るよ」と書いてある。これ、恐らくそういうこと、だよな?
ラウダにどう伝えたものが迷いながら、俺はひとまず昨日脱ぎ捨てた下着を探しにベッドを降りた。
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