※23話視聴前に執筆したため、齟齬があります。
兄さんと初めて会った日のことは生涯忘れないだろう。
失礼がないようにと母から言い含められ連れて行かれたジェタークの屋敷。それはそれは豪奢で、こんな家に住む同い年の兄弟なんてどうせいけ好かない奴なんだろうと思わせるに充分だった。
母の後ろに小さく隠れるようにして扉の前に立つ。たまに家に来る「父親」の隣に並ぶのは、散々聞かされた「グエル・ジェターク」だろう。
ふわふわの髪が日差しに揺れて明るい。あ、泣きぼくろ。気付けば観察するように見つめていたらしい。ばちん、と、まるで音を立てるように目が合った。途端に「グエル」は光り輝くような笑顔で僕を見た。たたっと階段を飛び降りて駆け寄ってくる。後ろで慌てた「父」が手を伸ばすのが見えたが、追いつくはずもない。
彼は僕の母越しに顔を出すと、何の衒いもなく右手を差し出した。
「ラウダだろ!? 会うのずーっと楽しみにしてたんだ!」
よろしく! と向けられた手は年相応に小さいのに、兄さんはずっとずっと大きく見えた。
思わずそろりと動かした手をぎゅっと握られる。熱い。心臓がどくんと跳ねる。
ぶんぶんと上下に振られる腕の痛みは気にならなかった。されるがままだった手の、その指先に、そっと力を込める。
あの日触れた温度を、僕はきっと忘れない。
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