【注意事項】
こちらの作品は、ラウグエ初夜アンソロ『Love is Growing』内、歯様作品のスピンオフとして書かせていただいたものです。(主催者様、歯様の承諾は得ております。)
是非すばらしい原作をお読みいただいた後にご覧ください。
やわらかな日差しに誘われるように、グエルの意識は浮上した。
陽光パネルであっても人間の身体はきちんと反応するらしい。いつもとそう変わらない時間に目を覚ましたものの、隣を見れば弟は幸せそうに眠っている。ゆるく開いた口元からはわずかに涎が見えて、思わずグエルは小さく笑った。途端に下半身がずくりと痺れる。重い感覚は昨夜、ついに弟――兼恋人のラウダと一線を越えた所為に外ならない。兄を傷つけたくないと躊躇する弟を煽るだけ煽った報いは甘い痛みを伴ってグエルの心を満たした。
そっと腕を伸ばして端末を取り、カメラを起動させて可愛い弟の寝顔を撮る。以前ラウダも同じことをしたのだから許されるだろう。身体の熱を満たしたのなら次は腹を満たすかと朝食のメニューを考え始めたところで、
「……ん?」
仰向けで眠る弟の下肢が変化しているのを視線が捉えた。緩く、だが確かに勃起している。
ラウダの顔をそっと覗き込むが目を覚ました様子はない。それならば、と大きな掌をそっと重ねる。幼子の頭を撫でるように優しく触れると、そこは更に布を押し上げた。
(足りなかったか……?)
朝だからとか、生理現象だからとか、原因はいくらでも思い当たるが、グエルにとって都合の良い解釈を採用する。弟を起こさないように静かにベッドを降りると、グエルはバスルームへと向かった。
準備を済ませて寝室に戻ると、さてどうしたものかとグエルは考えた。このまま咥えて起きるまでの反応を楽しむか、むしろ扱いて乗ってしまうか。どちらも魅力的な考えではあったが、ラウダの眉がきゅっと寄る。覚醒までそう時間がないことを知るとグエルは再び静かにベッドの中へと戻った。次の楽しみをとっておくのも悪くない。
それに、身体を繋げた翌日の弟の様子が単純に気になったのだ。
もぞりと隣で動く気配に、寝たふりを決め込む。ラウダはグエルがまだ眠っていると思ったのか、物音を立てないように動いている。と、長い溜息が聞こえてきてグエルは伏せた睫毛の隙間からそっと様子を伺った。口元を隠すラウダが昨夜のことを思い返しているのは予想通りだが、そんなに落ち込むような夜だっただろうか。昨日の様子からしてグエルに無理させたことを後悔しているのかと推測したが、グエルにしてみればもっとラウダの望むまま思いきり抱いてくれて良かったのにと思う。日頃冷静な弟がその仮面をかなぐり捨てて自分に向かってくることは、グエルにとってこの上ない喜びであるのだから。
(とはいえ、煽り過ぎたか……?)
反省はしているが後悔はしていない。なぜなら大変気持ち良かったので。
グエルの反応が一際良い場所を探し当てたラウダは執拗にそこを攻め、胸に刺激を与えると内壁が締まることに気付くと恐る恐る指を伸ばした。一回り小さな身体が上から押さえつけるようにナカを抉るのは大層興奮したが、「泣かせてやる」と豪語したラウダの方が最後は快感に泣いていたのでそこは今後の成長を期待することにした。
何はともあれ、グエルにとって昨夜が素晴らしい夜だったことに変わりはない。弟にとってもそうであればいい。バスルームで準備した内側からローションが内股を伝う。身震いしそうになるのを耐える間に、ぱふ、と横から空気が流れてきた。見えない筈なのにラウダの視線を感じる。起きていると気付かれないようにじっとしていると、さらりと前髪に指先が触れた。
(――もう我慢しなくていいよな)
「えっ」
驚いた声に被せるように揶揄いの言葉を告げれば、焦った弟は勢いよくシーツを引き寄せた。今更隠したところで幼い頃から今に至るまで散々見てきたというのに。にやりと口元を引き上げる。
「さ、最初からじゃないか……! 全部見てたの!?」
「どんな夢見てたんだ?」
「兄さん!」
ぺろっと捲り上げたシーツの中でラウダの性器は完全に下着を押し上げていた。フェラはまた今度かと思わず唇を舐めると、グエルはシーツを無理矢理引っ張って床に落とした。
「うわっ!?」
「うわとは何だ、失礼な奴」
「兄さん、下! なんで穿いてないの!?」
寝る前にきちんと整えた筈のスウェットだけではない。グエルは下着ごと穿いていなかった。正確に言うのなら、下着ごと既に床へ落としてあった。
「お前がリベンジしたがると思って準備したのに……何か不服か?」
ほら、と左膝を割り開いたそこは既に入念に準備されている。立派な性器は芯のないままであるが、その後ろ、グエルが指で開いたアナルからは先程自身で注入したローションがとろとろとシーツへ溢れていた。あまりにも淫猥な光景にラウダの下腹部が一気に重くなる。
「――ッ、もう知らないからね!?」
誘われるままに膝頭を掴み押し退ける。割り開かれた脚の間へ身体を進めると早急に自分のスウェットへ手をかけた。急いで下ろせば屹立が引っかかった勢いでぶるんと飛び出す。グエルの頭上にあるスキンを手に取ると怒りに任せて破ったせいでころりとベッドの下へ落ちていった。ラウダが唇を噛みながら二つ目の封を千切るのを笑いながら見上げる。大方、俺の弟は可愛いなあと思っているのだろう。
「兄さんっ!」
「別につけなくてもいいのに」
「それはダメ」
「即答かよ」
そこはラウダの譲れないところだ。もしも、万が一、どうしてもするのなら、万全の用意をしてでなければ。
陰毛を巻き込まないよう装着したところで、ようやくラウダは息を吐いた。
片手でペニスを握ると膨らんだ先端をアナルへ擦りつける。ゆっくりと肉の輪を潜らせると内側に満ちていた液体がこぷりと溢れた。兄が隣で寝たふりをしながらこれを隠していたのかと思うと興奮するやら悶えるやら、ぐちゃぐちゃの感情がラウダの中で荒れ狂う。あの狭いナカを朝から拓いて良いものかと躊躇するラウダの背に、ごつりと硬いものが当たった。鍛えられた脚が勢いよく背中を押す。
「ぅあっ!?」
ぶちゅる、と先程の比でない量のローションが溢れ出した。つまりは一気にラウダのペニスが収められたということで、一瞬で持っていかれそうになるのを歯を食いしばって耐える。
「……」
息を荒げるものの黙ったままの兄は口元に笑みを敷いたまま弟を見上げた。
また揶揄われたのだと理解する。理解してしまえば、迷う必要もない。
「……絶っ対に泣かせてやる」
左脚を抱え上げるときつく腰を押し込む。太股に指の痕が残ろうと構わなかった。腰を引き、強く挿す。遠慮なく速度を上げ、昨夜覚えた泣き所へと切っ先を向ける。徐々にグエルの表情から余裕が失われていくのを見下ろしながらも、快感とぐちゃぐちゃな情緒に振り回されるラウダが止まることはなかった。
「ラウダ、卵はどうする?」
今朝二度目のシャワーを済ませたグエルが上機嫌に訊く。
「……やわめスクランブルがいい」
「了解」
語尾に音符でもつきそうな声で答えると、グエルはタオルで髪を拭きながらリビングへと向かった。何故抱いたラウダの声が掠れているのか。枕に勢いよく頭を沈める。ふわりと鼻腔をくすぐるのは兄の香りと汗の匂い。じわり、ずくり。覚えのある感覚を追い払うように頭を振る。
「シーツは頼むぞ」
遠くから投げかけられた声は笑い混じりで、弾かれるようにラウダはベッドから降り立った。
憧れの兄で、先に惚れてしまった恋人で、ラウダがグエルに勝てる筈もないのだ。
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